本記事では次の内容を取り上げます。
オルタナティブデータの定義 – オルタナティブデータとは何か?
公開されているオルタナティブデータの収集は、金融セクターの専門家にとって、市場で現在利用可能な最善の投資を特定し行う上での戦略的アプローチの主要な部分となりつつあります。 従来のデータには、以下のようなものがあります。
- 会社の証券取引委員会 (SEC) 提出書類
- 公的に提出され、利用可能な四半期財務報告書
- 特定の株式の日次/週次/月次の出来高
一方、オルタナティブ金融データとは、ユーザー、投資家、企業がリアルタイムに活動することによって生まれるデータポイントのことです。オルタナティブデータとは何かを本当に理解するには、次の例をご覧ください。
- ある企業に対するソーシャルメディア上のセンチメント
- 工場や配送ルートの衛星画像により、投資家が財務報告を公開する前に購入/買い付けを先取りする(情報的優位性を得る)
- 関心のある企業/業界の販売量を示す消費者のデジタル取引情報により、投資家が販売量/収益性を評価できるようにする
投資判断を後押しするオルタナティブデータポイント
オルタナティブデータが投資に与える影響は、ベンチャーキャピタル、ポートフォリオマネージャー、エンジェル投資家が組織にとって最適な意思決定を行うために活用している具体的なデータポイントと比較することで、より良く理解できます。これには以下が含まれます。
- 商品データとレビュー – 例えば、出会い系アプリケーションに投資しようとしているベンチャーキャピタル企業は、ストアからのアプリのダウンロードデータや顧客のレビューデータを収集したいと考えます。このようにして、ユーザー獲得が増加傾向にあるのか減少傾向にあるのか、および実際のユーザーが考えるビジネスの改善点(付加価値)を知ることができます。
- トレンドの企業ニュース項目 – ニュース項目は、オンライン出版物に掲載された記事、またはソーシャルメディアで共有された記事です。企業はこれらのプラットフォームを監視し、自社のポートフォリオに含まれる企業が言及されるとリアルタイムでアラートを受け取ります。たとえば、株価に悪影響を及ぼす可能性のあるスキャンダルがある場合、ポートフォリオマネージャーはそのことを早急に知り、高い値段で株を売り、はるかに安い値段でポジションを取り戻せるようにしたいと思うでしょう。
- 消費者需要の変化 – 現代の消費者は気まぐれで、以前の世代よりもブランドへの忠誠心が低くなっています。消費者ニーズの変化を明らかにするデータポイントとしては、マーケットプレイスにおける特定の製品/ブランドに対する星の評価や、オンラインフォーラムにおけるブランド/製品に関する言及が考えられます。
- 業界動向 – 競合他社の動向を把握することは、投資を行う上で非常に重要です。プライベートエクイティ (PE) 企業が、女性向けオンラインファッションブランドに数百万ドルを投資している場合、競合他社の動向を知りたいと思うことでしょう。これらの企業は、新しいコレクションやサービス(カスタマイズされた衣料品パッケージを消費者の自宅に届ける)、およびマーケティングキャンペーンに関する情報を収集しているのかもしれません。こうした情報をもとに、取締役は経営幹部に対して具体的で建設的な批判を行うことができます。
- ソーシャルメディアセンチメント – 金融業界では、ソーシャルセンチメントデータは、ポートフォリオマネージャー/VC/PE 企業が自由に使える最も強力なツールの 1 つになり得ます。その最たる例が、AMC (American Multi-Cinema) に関する Wall Street Bets という Reddit のアカウントでのポジティブなセンチメントとネガティブなセンチメントです。簡単に言えば、状況を把握していたファンドは、無知な投資会社が損失をカバーするのに必要な資金を持たずに空売りをしたために経験した破綻を免れることができたのです。
- 検索エンジンデータ – Yahoo、Bing、Google などの検索エンジンは、多くの消費者が購買行動を開始する場所となっているため、投資家や企業にとって主要なツールとなりつつあります。検索トレンドをマッピングすることで、投資家は現在「関心」がどこにあり、市場がどこに向かおうとしているのかを知ることができます。たとえば、最近の「ハイテクバブルは崩壊するか」という検索が増加していることで、ポートフォリオマネージャーは保有銘柄の入れ替えを検討するのに十分な情報を得ることができます。
- 企業のコンプライアンスデータ – 多くの企業は、規制/ポリシー/コンプライアンス基準を変更します。これらの情報は Web サイトで公開されていますが、必ずしも投資家が積極的に関与しているわけではありません。ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した企業への投資を主目的とするファンドは、化石燃料の排出に影響を与えるポリシーの変更に関する最新情報を求めている場合があります。
金融セクターの専門家の間で、オルタナティブウェブデータがどのように統合されているか
オルタナティブデータの統合は、現在ヘッジファンドと保険会社に最大の影響を与えており、前者の 74% と後者の 72% が現在オルタナティブデータを組み込んでいます。こうした中、金融業界の専門家の 64% が、投資戦略の一部としてオルタナティブデータを使用していることを認めています。
金融セクターの主な調査結果を以下に示します。
- 米国を拠点とする投資会社や金融機関は、英国に比べ、オルタナティブデータを運用フローに組み込むことが容易であると感じています。(77% 対 49%)。
- 銀行業界の経営幹部の 75% は、オルタナティブデータ分析が主な障害になっていると考えており、50% はオルタナティブデータを実際に調達することが大きな課題であると見ています。
オルタナティブデータのソーシング
質的データ収集方法を模索している企業は、次の 2 つのオプションのいずれかを検討することをお勧めします。
オプション 1:データ収集の自動化
投資会社は、データコレクターを活用することで、財務データの監視、収集、発見を自動で行うことができるようになりました。これは、企業がハードウェア、ソフトウェア、および技術チームのタスクをサードパーティにアウトソーシングできるようにするゼロコードソリューションです。その見返りにリアルタイムのデータフィードを受け取ることができ、これらはアナリストまたは投資アルゴリズムに直接送信されます。
オプション 2:すぐに使えるデータセット
金融機関では、収集済みで、定期的に更新および強化される情報群であるデータセットが活用されています。この機能が意味することは、VC はランチをしながら投資先候補企業を推薦してもらい、ディナーまでにその企業への投資が価値あるものかどうかを判断できるということです。構造化されたデータセットが数分で配信され、あとはアナリストのチームが情報に基づいた意思決定を行うだけです。
キーポイント
投資においては、オルタナティブデータの金融的な活用事例がますます主流になりつつあります。しかし、現状では、アーリーアダプターが情報面で市場優位に立つチャンスはまだたくさんあります。怠けていてはいけません。